カール=ペーター=ウルリヒ
異常な皇太子、発育不良の夫
通称ピョートル三世。ピョートル大帝の娘のアンナが、ドイツのホルシュタイン・ゴットルフ公カール・フリードリヒに嫁いで1728年に生んだ子。 伯母のエリザヴェータ女帝に指名されて1761年に即位した。
当時のロシアはオーストリアなどと組んでプロイセンのフリードリヒ大王と戦争しており、 あと一歩で滅ぼせるところまで追い詰めていた。ところがフリードリヒ大王を尊敬していたピョートル三世はいきなり単独講和、占領地もすべて返還してしまった。 オーストリアは当然カンカンである。
残忍だとか不能だとかいうのは政敵が言っている事で、実際それほどの暴君だったのか、一年ほどの治世では判断できない。 こいつはこいつなりに、ロシアを近代化しようとしていたかもしれない。直接に失脚の原因になったのは、実家のためデンマークにチョッカイを出そうとした事である。
1762年にエカテリーナが操る近衛兵はクーデターを起こし、ピョートルをロプシャに追放した。そして7月6日に前皇帝は死んだ。 政府が発表した死因は、言うに事欠いて「痔をこじらせて死にました」である。現代ロシアの歴史家による新説では、「酔っ払いのケンカに巻き込まれて死んだ」とされる。 それじゃ女房に殺されたほうがマシであろう。
※マレーネ・ディートリヒがエカテリーナを演じた映画「恋のページェント」では、サム・ジャッフェという俳優がピョートル三世を演じ、 見事なイカレポンチ演技でアカデミー助演男優賞を取っている。この役者は後に「黒船」でヒュースケンも演じた。
九9十一122-124
H・カレール=ダンコース「エカテリーナ二世上・下」(2004.藤原書店)・デヴィッド=ウォーンズ「ロシア皇帝歴代史」(2001.創元社)
エカテリーナ女帝/ピョートル1世/ 大黒屋光太夫に馬車を貸した皇太子/大黒屋光太夫/イジュヨ/ フョードル

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