ザンゲの神様
なんと、このキャラにまでモデルになった実在人物がいた。しかも複数。
甲子夜話続篇巻三十八によると、
「大坂にて盗賊の魁首にて、五畿内辺等年久しく盗窃をして、終に捜捕せられ入牢せし者ありしが、…人をも多く殺害したるに、 是ぞ懼(おそ)ろしと思たることも無かりしが、一年せ月下に、旅人ただ独り夜更て行く者あり。…声をかけて待てと云えども、聞もせずして行くを、両三度呼かけたれば、 其とき顧て、待てと云は我がことか。我は高山彦九郎なるぞ。己れらが用の有る覚へなしと言て、もとの如く鎮々として通り過たり。その顧みたる眼精の鋭き、 心気の治りたる言語の体、真に畏み入て思はず後に下りたり。…是ぞ怖しかりしことなりと云し」
また彦九郎自身の日記では、天明二年に中仙道より上京していた時、 弥惣次なるバクチ打ちと道連れになった。彦九郎は博徒をやめて堅気になれと説教したが、弥惣次が病気になった時は親身になって看病してやった。
このように高山彦九郎とは、いかなる身分の人とも全力で本気に向かい合ってくれる人物だったのであろう。
七21-30,56九214-227十50
松浦静山「甲子夜話続篇3」(1980.平凡社東洋文庫)・野間光辰「日本の旅人7・高山彦九郎」(1974.淡交社)
高山彦九郎/松平定信/長谷川平蔵

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