おおくぼいますけ大久保今助?
河内山宗春の敵役。水戸藩の草履取りから身を起こし、金で身分を買い勘定方で活躍する。幕府の仕事で近江の隠し田を調査に行ったこともあり、 藩士というよりコンサルタント的立場だったらしい。
歌舞伎界でもうな丼ばかり喰っていたのではなく、中村座を江戸に呼び戻し経営まで仕切っていた、 興行資本家の草分けとして歴史に残る大物である。
なんで黄門様の水戸藩にこういうやつがのさばっていたのかというと、『大日本史』編纂事業などで藩財政は破綻に瀕していたのだ。 8代藩主斉脩が将軍家斉の娘と結婚したのを機に、重臣たちが今助を介して幕閣に運動し、年間約1万両の補助金をもらえるようになった。だがこれで藩風は堕落し金がすべての空気になってしまったのだった。 水戸斉昭が藩主になってからは綱紀粛正がはじまり、今助も排斥され天保五年に没した。
※橋本忍脚本の映画「白扇みだれ黒髪」では、 今助を強請りに来たのはなんと民谷伊右衛門という名の御家人で、鶴屋南北がこいつを元にして「四谷怪談」を書いたことになっている。
十三47-51
渡辺保「江戸演劇史・下巻」(2009.講談社)・長山靖生「天下の副将軍」(2008.新潮選書)・山田風太郎「風山房風呂焚き唄」(2008.筑摩書房)
河内山宗春/徳川斉修/中村歌右衛門

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